家計調査で見る新型コロナ禍3年間の家電製品購入状況

総務省統計局が公表している「家計調査」では全国約9,000世帯を対象に家計の収入・支出、貯蓄、負債などを毎月調査している。
このうち家計収支編での調査品目(2020年に品目改定実施)で、主に家電量販店が取り扱っている家電製品(家具・日用品、医薬品、スポーツ用品などを除く)の支出額を合算して、2020~2022年の新型コロナ禍での家電製品支出額=購入状況の変化を分析してみた。

年間の家電製品支出動向

同調査対象の品目のうち、テレビや冷蔵庫、照明器具、電池など家電量販店が販売している23品目をピックアップして年間の支出額を計算してみた。

家計調査分析 コロナ禍3年間の年計推移
家計調査 新型コロナ禍での家電製品支出額(年計)
2020年は「巣ごもり需要」の影響が顕著に

その結果、1月に国内最初の新型コロナウイルス感染者が報告されて以来、急速に感染拡大が発生し、3月後半からの第1波を受けて4月7日~5月25日まで「緊急事態宣言」が発出、その後8月からの第2波もあった2020年の支出額計は84,209円となった。
これは、外出自粛などの行動制限により飲食業界や観光・レジャー業界、交通業界などが大打撃を受け、流通業界も営業短縮・休業を迫られている中でも、家電製品は春まで落ち込みがあったものの、夏以降はいわゆる「巣ごもり需要」や「テレワーク需要」といったある意味で新型コロナによる「特需」が起こった影響と考えられる。

2021年後半から反動が出始める

2021年は、前年末ごろからの第3波による1月8日~3月21日の2回目の緊急事態宣言発出、3月下旬からの第4波、7月からの第5波によって4月25日~9月30日までのまん延防止等重点措置・3回目の緊急事態宣言下もあり、「巣ごもり需要」などが年半ばまで続いた。しかし、後半は前年からの「特需」の反動も出てきたため、家電製品の需要は低迷気味に。結果的に年計では81,552円(前年比96.8%)に終わった。

2022年は反動に加え買い控えも

2022年は、前年同様に変異株による第6波となり1月9日~3月21日まで2回目のまん延防止等充填措置となったが、春まではほぼ2021年並みの支出が見られた。ところが、夏が例年と比べて猛暑もあったものの、天候不順も続いたため季節商品が伸び悩み、後半は明らかに前年までの2年間の反動に加え、物価・光熱費の上昇の影響を受け、支出額は80,922円(前年比99.2%)と漸減した。
このように、新型コロナ禍3年間を見ると2020年~2021年前半までは在宅時間増加・外出自粛傾向といったライフスタイルの変化により「巣ごもり需要」「テレワーク需要」が顕著に表れていたが、それ以降は反動も大きく家電製品に対する支出額は抑制気味になったことが月別の支出額の推移を見ても明確に分かる。

家計調査分析 コロナ禍3年間の月別推移
家計調査 新型コロナ禍での家電製品支出額(月別)
アフターコロナでは景気動向を注視

新型コロナは、2022年11月以降の第8波が今年・2023年1月まで続いてピークアウトしたことで、「アフターコロナ」での経済回復が期待されている。が、感染状況の変化も含めて予断を許さない状況にある上、物価上昇・世界情勢による光熱費アップなどが長引く気配にあるため、景気の不透明感が増し、買い替えを中心としている家電市場への影響は少なくないと推察される。
このようなライフスタイルの変化、および「買い控え傾向」が強まる中では、「今持っている家電製品をより長く使いたい」といった意向から修理を行うケース、あるいは「アウトレット・リユース家電への買い替え」が増えることも考えられる。

主要家電製品の支出額推移

次に、同調査に基づいて主要家電製品の新型コロナ禍3年間の支出額の状況を見てみよう。

■テレビの支出金額(年計)
家計調査分析 コロナ禍3年間のテレビ支出
家計調査 新型コロナ禍でのテレビの支出額(年計)

テレビは外出自粛・在宅時間増加といった「巣ごもり需要」の代表格ともいえる製品であり、実際に支出額の年計を見るとコロナ禍前の2018年の5,322円、2019年の6,157円と比べると、2020年は7,503円と上昇している。しかし、2021年は6,991円(前年比93.2%)、2022年は6,172円(同88.3%)と支出額は徐々に下がっている。2020年の反動といった面も大きいが、大画面化が進み、単価が上昇している割には家電量販店の販売金額でも2021年以降、前年同月比割れが多くなっており、根本的な市場変化が考えられる。

■パソコンの支出金額(年計)
家計調査分析 コロナ禍3年間のパソコン支出
家計調査 新型コロナ禍でのパソコンの支出額(年計)

パソコンは2020年1月のWindows7延長サポート終了前の買い替え需要により、本来ならば反動が出てもおかしくない状況にあったが、2020年は12,874円となった。家計調査での「パソコン」は本体および周辺機器なども含まれたものであるが、これは「テレワーク需要」と呼ばれる在宅での仕事上、買い替えやランクアップ購入、周辺機器購入が増えたためと推察される。
2021年は特需の反動も大きく11,525円(同89.5%)と低迷。2022年は10,663円(同92.5%)と若干回復傾向になっている。

■冷蔵庫の支出金額(年計)
家計調査分析 コロナ禍3年間の冷蔵庫支出
家計調査 新型コロナ禍での冷蔵庫の支出額(年計)

冷蔵庫は新型コロナ禍で在宅時間の増加による内食傾向の強まりから買い替えが進んだ家電製品と言われるが、2020年の支出額は7,108円と、2019年の7,096円から漸増となった。ただし実際には前倒しの需要があったと考えられ、その反動から2021年は5,617円(同79.0%)と減少に。2022年は6,064円(同108.0%)と2018年並みにまで持ち直している。2023年は単価がかなり上昇している分、支出額が上昇するのか、買い控えが強まるのか注目される。

■洗濯機の支出金額(年計)
家計調査分析 コロナ禍3年間の洗濯機支出
家計調査 新型コロナ禍での洗濯機の支出額(年計)

洗濯機も在宅時間の増加による大容量クラスへの買い替えが進んだ製品であり、2020年の支出額年計は7,113円と2018年の5,856円、2019年の6,703円と連続してアップ。ただ冷蔵庫同様に買い替えの前倒しがあり、2021年は6,864円(同96.5%)、2022年は6,852円(同99.8%)と減少気味になった。

■エアコンの支出金額(年計)
家計調査分析 コロナ禍3年間のエアコン支出
家計調査 新型コロナ禍でのエアコンの支出額(年計)

エアコンは天候要因に左右されやすい製品であるが、2018年の支出額が11,494円、2019年は12,196円で、新型コロナ禍の2020年は12,460円と連続アップ。2021年はこの間の買い替え需要増加の反動もあって11,914円(同95.6%)と落ち込んだが、2022年は13,291円(同111.6%)と回復した。
大型白物家電全般で単価上昇が続いており、2023年はどのような影響が出るのか気になるところだ。

出典元:総務省統計局「家計調査」