商業動態統計から見た家電量販店販売規模の推移

商業動態統計で家電市場を分析

経済産業省による「商業動態統計」(旧商業販売統計)は、全国の商業を営む事業所及び企業の販売活動などの動向を明らかにすることを目的として1953年から開始され、2014年1月より「専門量販店販売統計調査」(家電大型専門店・ホームセンター・ドラッグストア)も含めた結果を公表している。
毎年データ補正を行い、2023年1月確報時に2022年の年間補正が出たことで、2014年以降の家電大型専門店≒家電量販店の販売額について、過去に遡っての推移をまとめたみた。

販売額は9年間で約1,530億円アップ

2014年以降の暦年ベースでの家電販売額の推移は下記のグラフのようになっている。
2014年の家電販売額は約4兆5,311億円で、2022年は約4兆6,844億円であり、過去9年間で約1,532億円のアップを遂げたことになる。実際は、大手各家電量販企業によって業績にはバラツキがあり、調査店舗数も毎年変動して、2014年対比で238店舗増加していることを加味して考えると、それほど家電市場全体が伸長しているとも言い難い状況だ。

経済産業省 商業動態統計 家電量販店販売額の推移

国内家電市場のうち、大手家電量販企業の売上構成比は65~70%を占めていると言われており、ほぼ市場全体の推移として捉えることができるが、2014年4月の消費税増税(5%から8%への増税)前の駆け込み需要とその反動、2019年10月の消費税増税(8%から10%への増税)前の駆け込み需要とその反動を考慮する必要がある。
ただし、2020年は本来駆け込み需要の反動が影響するはずが、新型コロナ禍による「巣ごもり需要」「テレワーク需要」などと呼ばれる、ある意味での「特需」があったことを留意しなければならない。
このように中長期で見た場合、年によって伸長・減少が見られるものの、トータル的には「市場自体はほぼ横ばいのまま推移している」と言えそうだ。
家電市場は商品カテゴリーによって異なるが、総じて買い替え需要が中心であり安定していることになるが、逆に言えば大きな伸長要因がないのが実態である。将来予測は難しいものの、よほど大きな新規カテゴリー・商品が生まれてこない限り、徐々に市場は縮小していくことになるだろう。

商品カテゴリーでの栄枯盛衰は明らか

商業動態統計の家電大型専門店販売額は6つの大きな商品カテゴリー区分で集計されている。その商品カテゴリー別の販売額を2015年を100として各年の増減率を表したのが以下のグラフである。

商業動態統計分析 カテゴリー別の増減率

商品カテゴリー別に見ていくと、生活家電(主に白物家電と呼ばれている商品)は買い替え需要に支えられており、特に季節家電であるエアコンや冷蔵庫、家事家電の洗濯機や掃除機などが堅調なうえ、時短や使い勝手のよい調理家電の増加、アフターコロナを見据えての理美容・健康家電の伸びなどもあって、今後も大きな市場縮小は考えにくい。
また、パソコンを中心にした情報家電も一時期はスマートフォンの台頭などもあったが、テレワーク需要を軸に動画配信サービスの視聴やSNSの影響もあり、従来の「パソコンのOSアップデート頼み」からは、ある程度脱却できた格好だ。同時にスマートフォン・携帯電話を中心とする通信家電もキャリア各社の料金プラン施策や買い替えサイクルの長期化などで需要も左右されがちであるが、普及率が高まり「生活必需品化」したこともあって、堅調さはキープできそうな気配にある。
懸念されるのは、金額規模も含めて生活家電と並んで大きいAV家電の低迷傾向だ。2010年(一部2021年)までの「地上アナログ停波」に伴う爆発的な買い替え需要から年数が経過し、2018年ごろから買い替え需要が顕在化したにもかかわらず、2020年の「巣ごもり需要」以降、低迷が続いている。一般的に「テレビ離れ」が各メディアで報じられており、大きな転換が見出だせない状況であるが、減少傾向に歯止めをかけていく「次の一手」が期待されるジャンルでもある。

家電アフター市場は微減傾向になるか?

家電市場が伸びないとなればアフターサービス(修理・メンテナンス)市場も縮小傾向になるのは必然である。先述したような家電市場が「ほぼ横ばい」になっているのは、一部企業を除いて家電量販店が「その他」(住宅設備商品および家電以外の日用品・医薬品・スポーツ用品など)の販売アップを強化していることも大きな要因として挙げられる。
ただし、ここまで見てきたように中長期的には家電製品の「残存台数」は確保されており、激減することは考えにくく、故障したら即買い替えというよりも、修理をしながら長く使い続けようという考えも消滅するわけではない。
今後、大きな商品カテゴリーの変化や新たな商品の出現はほぼ期待できないにしても、アフターサービス市場としてはカバーできる領域の拡大を測っていく、そのために対応範囲を広げられるスキルアップが重要になってくると考えられる。