【家電量販月次売上】ビックカメラ以外はマイナス基調続く

家電量販企業大手7社のうち、IR情報として月次売上速報を公表しているのはビックカメラ、ケーズホールディングス、エディオン、上新電機、コジマ(ビックカメラの子会社)の5社。いずれもPOS受注売上ベースの数字であり実際の販売額とは合致せず通期の売上等とも異なるが、家電量販企業の足元の販売動向や月々の変化などを知る上で重要な情報となる。
2023年6月度の月次売上速報が出そろった。

家電量販企業5社の6月度売上速報

家電量販店月次売上速報 2023年6月

6月は夏のボーナス商戦の緒戦・前哨戦のタイミングであり、大型家電の買い替えや高付加価値商品の販売拡大で期待される月である。加えてここ数年は猛暑が早い時期に到来する傾向が強く、夏商戦本番よりもエアコン等の季節家電の売上が急拡大している。
本年は結果的に上記グラフで分かるように、ビックカメラの「一人勝ち」が続いており、その他の家電量販店は今春以降のマイナス基調からの回復が見られなかった。これは2020~2022年の新型コロナ禍とは逆の傾向であり、都市型店舗で展開しているビックカメラはリアル店舗での購入客増加、ECでの販売増加、そしてインバウンド需要の復調といったプラス要因が幾重にも重なっていると考えられる。
一方、郊外型店舗を中心にして展開しているケーズホールディングス、エディオン、上新電機、コジマにとっては「巣ごもり需要」といった先食い気味の特需の反動に加えて、売上構成比の高いエアコン等の季節家電の販売が想定以上に伸びてないことを物語っている。
実際に、前年6月は中旬以降から7月上旬まで例年以上の猛暑が続いたことで急激にエアコン販売が伸長した。その前年との対比という面もあるが、天候要因としては今年も6月上旬から平年以上の高温になる日が見られたにもかかわらず、エアコン拡売の後押しにはならなかった。

エアコン売上 6月は前年割れ

前年6月が好調に推移したことと対比しているとはいえ、製品単価が上昇している中での「エアコン売上不振」は看過できないものとなっている。
気象庁が7月6日に発表した1ヶ月(7月8日~8月7日)予報によると、平年より気温が高い確率が北日本で70%、東・西日本で60%、沖縄・奄美で50%としている。この予報通りであれば、7月以降でのばん回となりそうだが、前年のように7月上旬までにエアコン購入が集中して、それ以降は暑い日があっても売場は閑古鳥状態となる可能性も否定できない。
大きな柱である「テレビ」の販売不振が長引いている中で、エアコンの販売は各家電量販店の業績に大きな影響を及ぼすことになる。果たして夏商戦本番で、どのような動きになるのか目が離せなくなってきた。

ビックカメラ

ビックカメラ 月次売上速報 2023年6月
■月次売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
98.0106.5113.393.5106.4101.6104.0105.9104.2104.8103.9108.4
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
音響映像商品87.1110.3101.9106.2105.696.3101.0101.3101.5105.3102.4111.3
家庭電化商品100.2103.0108.1102.0100.0100.3100.0104.9101.9102.597.3101.7
情報通信機器商品97.2100.7111.472.694.396.699.095.193.891.993.796.1
その他の商品105.4117.3137.2101.7134.0113.4120.9126.8134.3131.6133.4136.3

ビックカメラの6月度は108.4%と8ヶ月連続のプラスとなった。2023年8月期累計では104.4%となり、月次売上速報を公表している家電量販企業5社の中で唯一4ヶ月連続のプラスと好調さをキープしている。月次売上速報によると、「音響映像商品」ではデジタルカメラやオーディオが好調で、「家庭電化商品」では調理家電や理美容家電が好調で、洗濯機が堅調に推移。「情報通信機器」はパソコン本体やパソコン周辺機器がやや低調で、スマートフォンが低調だったため、前年同月比でマイナスになっているが、「その他の商品」はゲーム、時計、医薬品、玩具、スポーツ用品など総じて好調だったとしている。

ケーズホールディングス

ケーズホールディングス 月次売上速報 2023年6月
■月次売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
91.892.3106.197.893.1100.696.799.694.493.090.887.7
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2202年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
テレビ77.787.596.587.088.693.487.886.278.286.282.991.7
パソコン・情報機器101.897.3100.5103.4109.9116.3116.0105.499.9102.191.589.3
冷蔵庫112.399.6113.095.195.8103.1103.6116.297.291.486.985.1
洗濯機106.292.5120.3106.094.998.294.6103.198.098.892.4102.9
クリーナー104.594.2105.6123.382.892.692.290.394.896.892.394.7
調理家電94.990.0100.499.396.098.194.495.290.599.193.5102.2
理美容・健康器具96.197.5101.0100.7100.0103.0100.299.797.7106.5103.4106.0
エアコン80.693.0131.898.286.1113.788.191.891.877.185.971.8

ケーズホールディングスの6月度は87.7%と6ヶ月連続のマイナスとなった。この結果、2024年3月期第1四半期計では90.3%と厳しい状況が続いている。商品別では前月に引き続き「理美容・健康器具」のみ105.3%とプラスになった以外、その他の主要商品はいずれもマイナスとなった。
店舗状況は新店が3店舗(愛知県、滋賀県、東京都)あり、退店が1店舗(滋賀県の店舗がS&Bによる)あり、月末店舗数は552店になっている。

エディオン

エディオン 月次売上速報 2023年6月
■月次売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
全店94.097.8106.2101.597.8102.896.5103.097.297.797.890.6
直営店93.997.7106.9101.499.0102.595.8103.597.197.997.490.4
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
テレビ75.786.093.790.2103.394.390.190.081.490.591.788.7
エアコン86.7106.1121.7106.990.6122.891.397.891.692.198.674.5
冷蔵庫101.6108.4100.8100.995.4108.3104.9121.497.698.396.692.4
洗濯機101.996.7102.3109.599.299.793.3112.396.097.589.8101.8
パソコン100.2100.5104.2107.3111.5119.9112.2106.797.493.394.188.5
ELS事業
(リフォーム計)
123.5108.3116.0111.993.3101.697.895.696.595.691.985.8

エディオンの6月度は全店で90.8%、直営店は90.4%となり、いずれも4ヶ月連続のマイナスに。2024年3月期第1四半期計では全店・直営店とも95.0%とマイナスになった。商品別では「洗濯機」のみ101.8%とプラスになったが、その他の主要商品、ELS事業(リフォーム事業)はマイナスが続いている。
店舗状況は新店でFC店舗が2店あり、退店がFC店舗で1店あったことで、月末店舗数は1,211店になっている。

上新電機

上新電機 月次売上速報 2023年6月
■月次売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
89.895.5107.399.199.5100.399.0105.396.195.194.389.8
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
テレビ75.588.785.995.889.586.097.790.983.488.385.587.7
パソコン80.787.3101.795.3101.5100.4105.497.998.495.985.683.4
携帯電話128.6110.7143.8139.9152.1133.3139.6130.2115.1121.5116.2115.9
エアコン82.195.8124.5112.188.3120.699.992.787.267.582.171.9
冷蔵庫95.791.193.295.187.594.9101.3105.695.392.287.384.6
洗濯機・クリーナー98.990.895.7104.092.689.994.0110.893.195.290.994.4

上新電機の6月度は89.8%で4ヶ月連続のマイナスとなった。2024年3月期第1四半期では92.9%と新年度からのマイナス幅が大きくなっている。主要商品別では「携帯電話」が115.9%と依然好調さが続いているものの、その他の商品は軒並みマイナスになっている。
店舗状況は新店がなく、退店が1店舗あったため月末店舗数は220店になっている。

コジマ

コジマ 月次売上速報 2023年6月
■月次売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
既存店99.493.7106.498.297.398.293.490.486.490.490.689.2
全店99.895.6108.698.297.799.394.691.687.890.989.689.3
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
テレビ73.290.688.482.590.182.075.474.782.180.878.886.0
ブルーレイ・DVD
(録画機含む)
55.681.971.773.477.973.987.260.256.482.280.283.8
エアコン81.592.2120.4103.896.4109.389.887.684.975.990.373.7
パソコン
(本体のみ)
109.396.593.398.5110.6110.9108.798.894.694.184.779.5
携帯電話124.996.0115.8115.6114.1110.3112.4107.189.7102.0102.0100.9
洗濯機101.194.6109.0101.793.097.795.193.094.2101.599.3103.0
冷蔵庫100.989.593.288.188.993.594.3101.392.492.091.087.0

コジマの6月度は既存店が89.2%、全店で89.3%といずれも9ヶ月連続のマイナスとなった。この結果、2023年8月期累計でも既存店が93.9%、全店が94.6%と苦戦が続いている。月次売上速報によると前期のEC販売強化策の影響により、全体で前年を下回った(EC売上前年比74.8%)ほか、商品別では巣ごもり需要の反動でテレビや冷蔵庫がマイナスになり、エアコンは巣ごもり需要の反動に加えて、前年の猛暑に対するもので、大きく下回ったとしている。一方、洗濯機は販売施策の影響で103.0%とプラスとなり、ゲーム機本体も好調に推移している(前年比144%)。
店舗状況は出退店ともなく、月末店舗数は140店となっている。